中倉尾根の登山はルートファインディングを駆使して

中倉山 ♦中倉山/右端の山は松木川対岸にそびえる大平山
南東の方角から撮影

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中倉尾根(石塔尾根)概要

中禅寺湖スカイライン第二駐車場から ♦尾根全景
手前の白く見える沢は久蔵沢源流。中景、右からの稜線は社山南稜。
はげ山が中倉尾根。手前から中倉山、沢入山、オロ山、庚申山。
遠景の山は左から袈裟丸連峰、鋸山、皇海山。

中倉尾根尾根全容中倉尾根は松木渓谷の右岸に位置する尾根で、西端から庚申山、オロ山、沢入山、中倉山、横場山の峰々が連なっています。
 この尾根は "松木渓谷右岸尾根" さらに "石塔尾根"ともいわれ、尾根の北側は松木渓谷へ崩れ落ち、南側も急斜面ですが笹と樹木が茂り360度の景観が楽しめます。
 この山域は登山道や標識は完備されていませんので、ルートファインディングを駆使して登山をする必要があります。登山道に沿って歩くことに慣れてしまった登山者や、赤テープやピンクのビニール紐を見つけながら歩くことに慣れてしまった指導標登山者は注意しましょう。
 上掲写真は左奥から尾根伝いに庚申山、オロ山、沢入山、手前右からの斜面が中倉山です(上写真:2009/10/12)。
♦ルートファインディング : 地図とコンパスなどを使ったナビゲーション技術。

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尾根の東端にそびえる横場山(1017m)

横場山と中倉山横場山銅親水公園付近からは、西北西の方角に横場山とその陰に隠れる中倉山を見ることができます。
 右の写真では、手前の三角山が横場山で右奥が中倉山です。写真の右上空に見える線は、土砂災害を防ぐ為の山腹工事用のケーブルクレーンで、資材等を運搬しています(上写真:2009/09/17)。

赤倉山山腹工事現場 上記の山腹工事現場は、久蔵川左岸に位置する赤倉山の西面です。現在は基礎工事段階でロッククライミングマシーン(RCM)で、崩れやすい石や土砂を安全に撤去する法面(のりめん)掘削作業が行われています(右写真:2010/02/21)。

赤色中倉山 ♦黒横場山と赤中倉山 (手前の丘は松木尾根末端)
赤く染まった中倉山との絶妙な取り合わせの瞬間をスナップショット

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中倉山(1539m)

中倉山中倉山中倉山眺望
 右写真の支尾根は全て砂礫状態です。ここから見上げる中倉山は、急勾配のガレ場が続き、痩せ尾根斜面の土砂は脆く足元の土砂はポロポロ崩れ、登山者を拒んでいるように感じられます。実際、ここから登山するには、あまりにも危険過ぎます。
(右写真:井戸沢ダム右岸尾根からの眺望 2009/09/17)
(左写真:井戸沢ダム標高点826m付近の林道からの眺望 2009/11/27)

中倉山山頂中倉山中倉山
 周囲360度の大展望が広がる中倉山の山頂です。
 西側には沢入山、オロ山、庚申山そして皇海山が見える。北側には大平山、社山、半月山、そして男体山が見える。東側には赤倉山、南側には備前楯山が見える。
(上左写真:2009/10/12)
(上右写真:後方の山は男体山:2013/09/20)
 南側の明るい雰囲気の渓谷と、北側の暗い雰囲気の渓谷を目の当たりにしたとき、陰陽の考えが脳裏に浮かび、この対照的な風景の存在する道理がそれとなく納得できました
 (ームー;)? 。
♦陰陽:古代中国の易学の考え方。

山頂からの眺望中倉山(三角点1499.5m)からの眺望ではなく、中倉山山頂(標高点1539m)からの眺望をご覧ください。
⇒ 中倉山からの360度パノラマ眺望へ

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沢入山(1704m)

沢入山中倉山から沢入山中倉山から西北西の方角を見ると、沢入山の大きな山容が目に飛び込んできます。もちろん、軽やかで開放的な気分になります。
 沢入山までは稜線尾根をトレースするだけの、のんびりとした気分で歩けそうですが、途中の痩せ尾根は十分に注意して通過してください。稜線尾根の左右の斜面は、北側(松木渓谷側)は大崩壊地帯で、南側(仁田元沢側)は草木こそありますが、こちら側も急斜面が続きます。
 上掲写真の正面の山は、ほんとうは沢入山(1704m)ではなく、沢入山手前の小ピーク(≒1640m)です。近距離のため手前の小ピーク( ニセピーク) がせり上がり、わずかに残ったてっぺんしか見えません(写真:2009/10/12)。
♦ニセピーク(偽ピーク) : 本峰と間違えやすい、本峰手前の小ピークのこと。

西から見る沢入山沢入山東面のガレ 中倉山から沢入山までの間には岩場があり、稜線のガレているところは幅が狭くて、またがらなければ右か左の谷に落ちてしまいそうな痩せ尾根で、アルプスの稜線歩きみたいな恐怖を感じます(^_^;)。
 左の写真は沢入山ニセピーク東面のガレ、右の写真は西側から撮影した沢入山です(上左右写真:2009/10/12)。

中倉山と沢入山 ♦対岸の林道から写す(近景は松木尾根)

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オロ山(1822m)

沢入山から皇海山沢入山からオロ山沢入山からオロ山に続く稜線は高低差が約210m程しかありませんが、コルからの登りは獣道が何本も並行して笹原の中を走っているので迷いやすく、さらには倒木の多い急斜面な樹林帯になってくるので尾根筋から外れないように注意して進みましょう。
 上写真は、沢入山山頂を越し、これから進む西の方角を写したものです。主稜線の奥にオロ山、背後にそびえる二つの山は、左が庚申山で右が皇海山です(上写真:2009/10/12)。

沢入山とオロ山 ♦沢入山とオロ山/対岸の松木尾根から撮影(上写真:2017/09/10)

沢入山からオロ山北尾根 オロ山北面支尾根オロ山の北に分岐している尾根は、足尾の険しい山岳地域としては珍しく傾斜が少なく広がりのある台地状 (天端幅約100m、天端長約200m)になっています。しかし、この肩尾根の北東部は写真のように、足尾で最も急峻な崩壊地帯にあたります。
 上の写真では、主稜線の奥にオロ山がそそり立ち、そこから大きな支尾根が北に分岐しています(オロ山北尾根)。背景にそびえる左右二つの山は、庚申山と皇海山です(上写真:2009/10/12)。

オロ山と皇海山 ♦オロ山北尾根/松木尾根の•1356m地点から撮影

庚申山山頂オロ山オロ山から庚申山オロ山と庚申山の間の鞍部にかけては、傾斜のゆるやかな平坦地形です。
 しかし、笹丈は高く胸の高さにも及び藪漕ぎが困難になります。笹藪には倒木が隠れているので、向こうずねを打ちつけて転倒することは避けて通れません(必ず転びます)。
 ルートファインディングの楽しさはありますが当人にとってはたいへん心細くなる場所です。
 オロ山鞍部からの庚申山への登りは長さ約1km、標高差約150mの自然林が続く藪漕ぎです。
 このように足尾の山は登山道に沿って歩くだけではないので、常にルートファインディングを駆使して登山をする必要があります。
(上左写真:オロ山三角点:2009/10/12)
(上右写真:庚申山山頂:2009/10/12)

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尾根からの ながめ

備前楯山石垣山備前楯山と石垣山山頂部が二峰に分かれて見える山が備前楯山(1272m)で、左に連なる稜線のピークが石垣山です。
 石垣山(1106m)は、本山小学校の裏に位置する山で、児童たちの守り神としての存在感がありました(写真:2009/10/12)。
♦本山小学校と石垣山

松木沢ヘリポート松木沢ヘリポート松木村跡 (松木沢ヘリポート)までは、銅親水公園駐車場から約3kmの道のりです。西南の方角に位置する中倉山から見下ろせば、南米ペルーにあるナスカの地上絵を思わせる光景が眼下にひろがっています
(写真:2009/10/12)。

松木沢ヘリポート ♦松木沢ヘリポート

松木堆積場跡 ♦松木尾根に残るカラミ堆積場跡/製錬過程で発生したカラミの捨て場跡が松木堆積場跡です。
テ(からみ):製錬によりョ(かわ)と、かすに分離する。このかすをテあるいはスラグという。

白根山白根山右の写真は、日光白根山(2578m)で、これより北に位置する山は全て白根山より低く、関東地方での最高峰でもあります。
(右写真:沢入山から:2009/10/12)

塔の峰塔の峰右の写真は塔の峰(1738m)で、右奥の山は庚申山です。
(右写真:2009/10/12)

皇海山皇海山右の写真は皇海山(2144m)で、日本百名山に選ばれています。沢入山付近から望む姿は、独立峰と見紛う程の風格ある山容を呈しています(右写真:2009/10/12)。

半月山半月山右写真の山は半月山(1753m)で、中禅寺湖南岸に位置しています。半月山の南に伸びる肩は、県道の終点で駐車場になっています。そこは足尾山塊の山をながめる絶好のビューポイントです(右写真:2009/10/12)。
♦栃木県道250号中宮祠足尾線 : 赤倉山付近の未通区間を挟み南北に分断している為、北側区間の終点が上記の駐車場で、展望台でもあります。

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モニュメント(記念碑)のある風景

岩峰群モニュメント群石塔尾根とも言われるほど、多くの石塔が散在する中倉尾根のモニュメント群。
 アメリカ合衆国のモニュメント・バレーにあるモニュメント群と比べると、猫の額ほどのスケールですが、足尾にも存在する石塔尾根岩峰群(モニュメント群)を見てください(写真:後方右端の山は社山:2013/09/20)。

石柱(オベリスク)•917mの上方で立つ石柱写真の石柱(オベリスク)は、上久保沢近辺で写しました。背景のダムは仁田元川四号堰堤(右写真:2009/10/12)。

テーブル形の岩ササ原に立つ石柱右写真は、オロ山と沢入山の間にあるテーブルの形をした岩ですが、笹原の広がる斜面に一つだけ立っています(右写真:2009/10/12)。

ゴジラのような石塔尾根を象徴する石塔中倉山三角点から南東に延びる尾根上には、岩峰が散在します。
 目立つ石塔をよくよく見れば、頭上にケルンをのせています。
 このように恐ろしく高い岩頭に、石を積み上げたスーパーマンはどなたでしょうか(写真:石塔尾根を象徴する石塔:2013/09/20)。

丘のような岩石柱(オベリスク)人頭形状の岩仁田元川中流域の仁田元川二号ダム上部に、半球状の形をした岩山(右写真)があります。
 その岩山の一部が浸食されずに残ってできた、人頭のような形状の石塔(左写真)があります。
(左右写真:2009/11/27)

石塔尾根の岩峰 ♦石塔尾根は中倉尾根の別称です。
中倉山の東南東に延びる尾根上に立つ石塔尾根を象徴する石塔。

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けなげな木のおはなし

けなげに生きる樹木たち足尾山塊荒廃の原因の一つは、製錬所からの鉱煙ですが、これに加えて過酷な気象条件があげられます。夏の集中豪雨、冬の寒風、凍土により地面が持ち上がり表土は脆くなり基岩が露出してしまいました。
 このなかで、今もけなげに生きている樹木たちがいます。

ブナの木 ブナの木 ブナの木表土が流出してしまった中倉山稜線の尾根道の、さらに過酷な松木側で生きている一本のブナの木があります。
 その根は地中深く食い込み、夏の集中豪雨による土石の流出を食い止め、冬の風雪に対しては独りで耐え、ほんの時たま訪れる登山者たちとの対話を、何よりの楽しみとして生きています(上左右写真:2013/09/20)。
♦孤高のブナ:かつて製錬所から出た亜硫酸ガス等の影響で足尾の山は荒廃した。草木の枯れた中倉山(1539m)の尾根に生き残った一本のブナの木がある。いつしか登山者たちはこの木を「孤高のブナ」と呼ぶようになった。

沢入山の東に位置する小ピークから中倉山を見る ♦沢入山の東にある小ピーク(≒1640m)から中倉山を見る
表土が流出してしまった中倉山稜線で けなげに生きている一本のブナの木
♦沢入山とブナの木

ナラの木 ナラの木ナラの木仁田元ダムの河川敷で、出水時には水に浸る場所があります。その過酷な場所で、孤高に生きるナラの木があります。
 左写真は樹木をアップで撮影したもので、右写真の背景の山は中倉山です(左右写真:2012/05/05)。

仁田元沢に生きるナラの木 ♦楢若葉/仁田元ダム河川敷に生きるナラの木

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中倉山を仰ぎ見る

庚申山の東5kmにあり、山頂はササ原の山、中倉山を仰ぎ見ましょう。

間藤浄水場と本山小学校 ♦石垣山/中倉山/間藤浄水場/本山小学校
小学校の裏山が石垣山、写真の右奥が中倉山

中倉山 ♦中倉山/森の番人(松木ジャンダルム)/松木村跡にて撮影
右端の岩場が松木ジャンダルム、"森の番人"とも呼ばれています

松木川と中倉山 ♦中倉山/松木川
川沿いに残る石碑は松木川の流れを黙して見続けています

松木尾根から中倉山 ♦横場山/中倉山/松木尾根から撮影
横場山とのキレット状のコルから一筋の陰影が松木川に向かって切れ落ちていました

中倉山 ♦中倉山/製錬所/愛宕山から撮影
まぶしいほどの青空が広がる秋の空を背に中倉山が立っています
製錬所の煙突が画面の中央に見えます

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◎ 本ページの作成に当っては下記文献を参考にさせていただきました。記して深謝申しあげます。
  • 秋山智英(1990)『森よ、よみがえれ 足尾銅山の教訓と緑化作戦』農山漁村文化協会
  • 岡田敏夫(1988)『足尾山塊の山』白山書房
  • 増田宏(2008)『皇海山と足尾山塊』白山書房

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中倉尾根概要
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尾根から展望
モニュメント群
けなげな木
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